北海道札幌市の保育園で働いてる9年目の保育士です。
私の紹介する絵本は
「いもうとのにゅういん」 作:筒井頼子 絵:林明子 です。
兄弟のいるご家庭ではもちろんですが、一人っ子のご家庭でも、お兄さんお姉さんに成長しようとするタイミングで読んであげると心の成長によいと思います。
「いもうとのにゅういん」のあらすじ
あさえが幼稚園から帰ると妹がぐったりしています。
そしてお母さんがお留守番をあさえに頼みます。
「あやちゃんを病院に連れて行くからね」という言葉にあさえは、不安というよりも妹の方が心配でたまりません。
そして、しばらくたち再び帰ってきた母親が、妹の荷物を用意し「入院する事になった」ことを伝え再び出かけていきます。
そして、あさえは、妹が元気になりますようにという気持ちを込めて考えます。
病院という慣れない場所で寂しい思いをしているのではないか、遊ぶものがなくて困っているのではないか、と様々なことを思っているうちに思いついたことがありました。
あさえの大切な人形を妹のあやちゃんがいつも貸して欲しがっていた事思い出したのです。
そこであさえは、自分の宝物である人形を包み紙に包んで、手紙を添えてプレゼントしてあげることです。
そして次の日お父さんとプレゼントを持って病院を訪れ包み紙を渡し、それを開けた妹の喜ぶ顔を見て安心するあさえの姿がありました。
それを見た両親は一晩での心境の変化や成長に感心させられます。
「いもうとのにゅういん」のレビューとおすすめポイント
このお話の見所は、本当に家族の中で起こり得ることを絵本にしているところだと思います。
例えば、下の子が生まれることで母親が入院して寂しい思いをしたり、複雑な心情になる時そして、
この絵本と同様兄弟が病気や怪我で入院をしたことでいつもと家の環境が変わってしまうことです。
上の子としては理解しなくてはいけない状況だけどうまく消化できないこと、不安でいっぱいなることは誰もが通る道だと思います。
きっとこの絵本のあさえも、絵本では言葉で表現されてはいませんが、あさえの表情から絵本を見ている子供達にも十分に伝わると思います。
しかし考えると自分よりしんどい思いをしているのは誰だろうか、姉としてどういうことをしてあげることができるのだろうか…。
と不安な中で悩み考えだした答えが妹に自分の宝物である人形をプレゼントすることです。
そう決めたあさえの表情は、妹が入院するときいた時とは明らかに違い一気にお姉さんの表情に変わります。
そして、この絵本の良いところはあさえの決心したことを、母親が言葉にして認めてあげているところだと思います。
きっとあさえの自信につながったのではないだろうかと聞いている子供たちにもそう伝わるに違いないと思います。
この絵本は年中、年長児に読むことが多いのですが、この頃は下の子が生まれるという状況の子がクラスにいるということはよくあります。
園では年中、年長はお兄さんお姉さん扱いをされがちですが、環境が大きく変わることはまだまだ不安でいっぱいです。
この絵本を見て、あさえのように強くなって欲しいという意味ではありませんが、暖かい優しい気持ちに触れ何かを感じて欲しいなと思い読みます。
そして読み終えた後この本を見てどう思ったか??ということを聞いてしまっては逆にプレッシャーに感じる子もいるかもしれないと思い特に、内容について振り返ったりしないようにしていません。
一人一人感じていることがきっとあるはずだと信じているので、その時に感じたことを個々の心の中にとどめてくれたら良いかなと思っています。
楽しいお話を読むばかりではなく、子供の心に訴えるような内容のものを時々に入れることも良いのかなと思っています。
いもうとのにゅういん (こどものとも傑作集)